『季語の誕生』&『阿修羅』

  • 2010/02/07(日) 12:54:14

ちゃんと家にいる日曜日なので、俳句の本の紹介をしたいと思います。

【宮坂静生『季語の誕生』】
宮坂静生『季語の誕生』岩波新書(平成21年10月)

やっと読み終わりました。
勉強になります。芭蕉の俳句も最終的には「地貌」に繋がる様になるということも一つの解釈としてはありだと思います。
それより、古の雅人がどう思って美意識を構築していったのか、そこに民族の遺伝子的な生活背景があったはず。と言う考察は面白かったです。
詳しい書評は「夏潮」に載せることになろうと思います。
本書をご一読ください。
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【阿修羅】
行方克巳句集 『阿修羅』 角川書店(平成22年1月)
行方克巳さんの第五句集。ちゃんと先週購入いたしました。
タイトルや装丁ほどお泥尾泥していていませんが、迫力たっぷりな句が並んでいます。
それにしても収録句が多い。七百五十句近くあるのではないでしょうか?

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・氏の句の特徴である季題や対照に自分を投影させた句が多く楽しい。
・ダイナミックなスケールで大雑把な私は大変好感を持ちました。
・主観が強いとも言えますが、季題からの解釈で分らない句が少ないのも、慶大俳句、清崎敏郎門らしい特徴が出ていると思います。
・句数に比して用いられている季題の種類が少ないのが若干気になりました。
季題を諷詠する立場からすると、いろいろな季題の「あはれ」を見せて頂きたかったです。
・また、同じパターンのリズムの句が散見される分、若干損をしている印象もありました。
・上と重なりますが、写生の最後の部分で慣用句に頼ってしまう傾向気になりました。それが嵌っている句も多いですが、多用感は否めません。句集って難しい。
・それでも、非常に佳句が多く刺激を受けました。

以下、気に入った句を抜き出しました。数が多いので、誤字脱字があったらご指摘ください。

●冥福
花のうへに人またひとの上に花
一物(いちもつ)の気色(けしき)はありて花の冷え
春は曙点滴に繋がれてゐる
遠足のしんがりにつもの二人
美は乱調のうちにありとぞ夕牡丹
指触れし磯巾着の片靡き
青葉潮どこ膨らむとなく寄する
はたた神関八州を渡りけり
仲裁が喧嘩つ早き祭かな
振向いてとかげくすつと笑ひけり
用もなき水着売場を通りけり
恐ろしき夜店の裏の水溜り
一天の無尽蔵より滝落とす
金魚玉金魚一匹づつ死なす

●阿修羅
閻王の舌にありけり力瘤
欲ふかき善男善女夏の月
阿修羅像うつしみは汗とめどなく
阿修羅像わが汗の手は何なさむ
われも遊行なれの遊行や赤とんぼ
菊人形背ナのうつろのあられなき
倒木を打つて木の実の跳ね違ひ
だんまりの二人に木の実降りやまず
枯蓮のマリオネットを水に吊り
生涯の透けてゐるなり日向ぼこ
しぐるるや狸小路のとんかつ屋
肉を切らせ骨を切らせて鮟鱇は
鮟鱇の七ツ道具を展じたる
鼻風邪の男の嘘を聞いてゐる

●初旅
去年の闇今年の闇を通りけり
獅子舞の口中に何でも入る
霜柱千年は短かすぎないか
雪下ろす二人相和すとも見えず
沖つ波辺つ波白し実朝忌

●花祝
供養針鎧ひて豆腐むくつけき
春寒くささくれ一つもてあまし
小鳥来て糞(まり)してバレンタインの日
引つかけし棒ごと放り蝌蚪の紐
右向け右の中の左や卒業す
御城下の桜も五風十雨かな
よく喰らひよく書き死にき四月馬鹿
絶品のうなじが通る柳の芽

●落椿
僧正の蛙の組んづほぐれつつ
国引のここな島根のつくしんぼ
鶏血を淋漓と散らし落椿
御城下の小さな菓子舗春時雨
いつよりの片われなるぞ桜貝
壺焼の炎みぢかく上がりけり
藤房のふはりと力ぬきにけり
祭見るひとの子ひとの妻愛しき
祭の子何か拾つて叱らるる

●八衢
麦埃あげて一村海近き
麦秋のちんぼこ一つ得て生まる
こくこくと麦の匂ひの乳ならむ
孑孒のふらの部分のありにけり
孑孒が孑孒をかしとぞ笑ふ
噴水の高さの何処よりが過去
家なくて子なくてなめくぢりとは言ふぞ
地球儀の如く廻して西瓜切る
羅や氏より育ちされど氏
黴の世の三年寝太郎もう起きよ
Tシャツの顔が貼りつく原爆忌
それ以後の唖蝉の数広島忌
鬼やんまぶむと発進したりけり
片はらに眠りて他人夜の秋
秋暑し暑し河馬的処世訓
波が波連れて走りぬ星月夜

●父不在
鮭網の修羅のたちまちなまぐさき
色変へぬ松に夕日の濃かりけり
就中男末枯れまぬかれず
青年の息もりんごもすぐに錆び
秋風の鶏口よりも牛後よき
満月の子を盗ろ子とろ父を取れ
電線につながれて枯深む家

●鯛焼
焼藷の匂ひがさりと包みけり
冬波の恋路ヶ浜に無為無策
鷹の眼の見据ゑる有象無象かな
三界に家なき破れ障子かな
この下に入れと万燈揺り立つる
鯛焼は一寸泳がせてから食べる
むくつけきものを吊るして破芭蕉
鮟鱇のすべて開陳して何ぼ

●荼毘の火
民草は土に居眠り十二月
荼毘の火の遠き明滅年を守る
冬帽子ラフマニノフを聴いてゐる
雑炊の腹に落ちゐてあたたかく
練炭の穴にも業火見ゆるかな
皆帰るところがありて日向ぼこ
朝な朝な生活の雪を踏み固め
子持山そのかへるでの芽立かな
眼のかわくまで瞠きて春の闇
蝌蚪群るるN極とS極とあり
バス空いてをりて蛙の目借時
引越の荷とがらくたと花の下

●憂国
春行くや丹田ゆるびたるままに
創るも火葬るも火なり山桜
渡御筋に祭半纏飲んだくれ
飛魚の忿懣やるかたなくて飛ぶ
ほととぎすかつみかつみと来しからに
金魚屋の水槽の向かうにも金魚
鏨もて穿つ一山ほととぎす
間歩出でて我も無宿や合歓の花
みんみんのみゆーんと力抜きにけり
立秋の柱によればわが齢
デパートに残暑のR階がある
秋風やわがZ旗はわが胸に
裏表なきまで秋刀魚焦がしけり
憂国は死をまぬかれず曼珠沙華


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行方カツミさんですか。
なつかしい。
彼に一句。

ベンツはね赤ってきまりブルルルルン(季語なし)。

●ロクロウタ様

深く酔っぱらってらっしゃいますでしょうか。
我が輩のような若輩者では返信のしようのないコメントを有難うございます。

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