【綾部仁喜句集『沈黙』】

  • 2011/06/30(木) 15:15:09

【綾部仁喜句集『沈黙』】
 ふらんす堂、平成二十年九月
「泉」主宰の綾部仁喜氏の第4句集。
「鶴」で石田波郷に師事。平成二年より「泉」の主宰を継承されている。

 奥様の脳梗塞での入院、ご自信も喉の眼の影響で声帯を失うという境涯になりながら、淡々とかつ力強く俳句を詠み上げている。
こういう句集を見ると、我々の世代の句は饒舌すぎて季題を活かすことができていないのではないかと反省をする。


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以下、印を付けた句から幾つか紹介したい。
●平成十四年
雪吊の中にも雪の降りにけり
牛鳴いて雪形はまだ雪の中

●平成十五年
菰巻の人ごゑ松を移りけり
たくさんの音沈みゐる冬の水
若鮎の匂ひの水を搬び来る
枇杷の種吐いてひと日が余りけり
うつつなき妻がもの言ふ秋の暮
青空が日ごとに深し耐ふるべし

●平成十六年
葉を一つ足す蓑虫の冬仕度
初日浴ぶ片足漕ぎの車椅子
耳掻きの二日の曲り具合かな
誰が息か咽を出て入る夕霞
行く鴨の遥かに声を失へり
五十音図指さして春惜しみけり
桑の葉の一枚づつの明易き
胸中に一死はためく日雷

●平成十七年
跡切れてはつづく木立や星祭
渡り鳥ひとたび消えて高みけり
沈黙のたとへば風の吾亦紅
二三人墓に人ゐる野分かな
筆談は黙示に似たり冬木立
妻に逢ひ白木蓮に会ひしこと
菱の実の水を離れて尖りけり

●平成十八年
ひと足を踏み出して年つまりけり
古年の声かたまれる畑雀
水の面を打つて消えたる初霰
寒木となりきるひかり枝にあり
いちにちはひとりにひとつ寒椿
舌すこしのぞける雛飾りけり
帚木の姿ととのふ山の陰
夏木よりすこし遅れて眠り来る

●平成十九年
眉寄せて痰引く夜業われにあり
綿虫や病むを師系として病めり
まつすぐに来る元日の車椅子
寒林へ影を加へにゆくといふ
冬泉命終に声ありとせば
薄氷を水の離るるひかりかな
苗挿しの水は濁さぬ足構へ
天水田最上段の遊び苗

●平成二十年
沈黙を水音として冬泉
病室に人来て聖歌うたひ去る
春を待つ十指の一指づつ覚めて
鳥帰るころの北空ならば見る
春泥の流れどまりが膨れをり


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桃の実

  • 2011/06/30(木) 08:21:05

【桃の実】
近所の桃の木に実がつきだしました。
青梅と比べてみると随分違う形をしています。
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前北かおる句集『ラフマニノフ』一句鑑賞
●ペリカンのたるめる喉や松の内 かおる
2002年1月6日 八景島(1月9日 慶大俳句三田句会) と前書。

季題は「松の内」。水族館のペンギンの喉のたるみを見ていると、何ともまったりしていて、ゆったりとした「松の内」を感じたということでしょう。
取合せとしてはなかなか面白いですし分かりやすいのではないでしょうか。

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夕焼け

  • 2011/06/29(水) 18:51:49

【蟻の道】
蟻が道を作っていました。
公園の手すりにずっと。
こういうのを見ると夏だと思います。
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前北かおる句集『ラフマニノフ』一句鑑賞
●羽子板を乗り出して見得きれるかな かおる
12月18日 浅草・羽子板市 と前書。

季題は「羽子板」。
羽子板市に飾られる派手な歌舞伎役者の羽子板の様子を斯く様に描きました。
逗子の師匠の影響を強く受けている一句でしょうか。
中七下五の句跨り方がセクシーです。

【夕焼け】
丸ノ内も夕焼けです。
今日は暑かったです。節電の効果はあるのでしょうか。
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前北かおる句集『ラフマニノフ』一句鑑賞
●残りたるいつもの顔や年忘 かおる
12月22日 (12月25日惜春夜句会) と前書。

季題は「年忘」。二次会三次会と続いた光景でしょうか。
当時の私もこのうちの一人でした。おんなじ様な話を愚だ愚だしつつ、一年を振り返っているのでしょう。
静かな詠いぶりがしんみりさえてくれます。

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雅叙園

  • 2011/06/28(火) 06:27:08

【雅叙園】
目黒雅叙園に行ってきました。丁度節目の日から一周年を迎えます。
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前北かおる句集『ラフマニノフ』一句鑑賞
●マフラーや東京にカフェ増えてきし かおる
12月10日(12月11日 慶大俳句日吉句会) と前書。

季題は「マフラー」。季題の働きが薄く現代的な内容を切り取っている「ライトヴァース」的な一句であるといえます。

「ライトヴァース〖light verse〗内容や文学性よりも形式の妙で人を楽しませる種類の,娯楽的な詩。」(大辞林第三版)

それは兎も角「マフラー」というお洒落アイテムを着こなし、東京を「上から視点」で眺めている作者がいらっしゃいます。

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フォーティーズ

  • 2011/06/27(月) 06:39:06

【フォーティーズ】
昨夜帰宅してみると、ドラゴンズ戦@広島、のテレビ中継の再放送があり観戦。
前田智徳、石井琢郎の40歳代コンビが8回裏連続代打タイムリーで勝利。
交流戦後初カードを勝ち越して、借金を一つ返しました。

相変わらずの貧打ですが、セ・リーグになると相手も打たないので気が楽です。
お立ち台の二人のコメントが泣かせます。

一方、新人中村恭平を初め、今村ー岸本ーサファテと完封リレーで繋いだ投手陣も援護が無い中、健気で素晴らしいです。
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前北かおる句集『ラフマニノフ』一句鑑賞
●酒休み入る笛方里神楽 かおる
12月1日 同前

季題は「里神楽」。
これまた椎葉の神楽の様子を詠んでいます。
そういえば迷句集として名高い、『先つぽへ』には
神楽の俳句が6句ありました。
どれも類句がありそうでないところを詠んでいます。

この句は如何でしょうか。誠実に詠っている感じが好ましいです。

                  〆

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蛍の菓子

  • 2011/06/26(日) 18:00:06

【アップ】
朝からこちらは元気であります。
昨日変則的な睡眠をしたにも係らず絶好調のようで、両親を叩いて起こし回っています。
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前北かおる句集『ラフマニノフ』一句鑑賞
●ぽくぽくと竹の筒より温め酒 かおる
11月30日 高千穂・椎葉 と前書。

季題は「温め酒」。いよいよ高千穂・椎葉への里神楽吟行の俳句になってきました。
この句は、導入と言う感じで、高千穂の温め酒の様子を描きました。
「ぽくぽく」という擬音が効いております。

【サンダル置場】
ベランダのサンダル置場には、水に強い良い紙を使っている高級紙が丁度良いのです。
ただし、水性の赤ペンを使っている場合、雨に濡れると滲むので注意が必要です。
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前北かおる句集『ラフマニノフ』一句鑑賞
●山眠る全き月を上らせて かおる
11月30日 同前 と前書。

季題は「山眠る」。
もしかすると神話の山々を見渡す展望台での一句でしょうか。
これから来る、高千穂・椎葉の夜の深さを斯く様に詠い上げました。

【蛍の菓子】
そういえば蛍のシーズンです。
娘が蚊に刺されることを恐れ、蛍を見に連れていっていませんでした。
その替わりに妻が和菓子を用意してくれました。
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前北かおる句集『ラフマニノフ』一句鑑賞
●手力雄の歯までも赤し里神楽 かおる
11月30日 同前 と前書。

季題は「里神楽」。いよいよ里神楽に入りました。この句は「歯まで赤い」に気が付いたところが嘱目でしょうか。
口も頬も赤いということでしょう。

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田島健一句集『霧の倫理』

  • 2011/06/26(日) 01:12:08

【鰻丼】
昨夜の夕食に鰻が出てまいりました。
暑い日々が続いていたので、これは嬉しかったです。
勿論味も大変結構でした。妻に感謝です。
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【田島健一句集『霧の倫理』】
「炎環」などで活躍されている、田島健一さんの電子書籍としての句集。
下記HPからダウンロードしました。
http://moon.ap.teacup.com/tajima/

30句ばかりの句集ですが、言葉の斡旋が巧みで勉強になりました。
基本的には取合せで作られることが多い方ですが、季題に無理をさせていない句も多く、勉強になります。

以下印をつけた句を紹介します。

・雉子ここに何か伝えにきて沈む
→「雉子」の哀れさが伝わって参ります。
・雨の避暑地に飾られし日本刀
→「避暑地」で雨に降られるとやることないですね。手持ち無沙汰感が出ています。
・馬冷やす巷ふしぎな辻ばかり
→不思議な俳句ですが、「馬冷やす」と言う伝統的な季題が効いています。
・うつくしき朝日を値切る金魚売り
→「朝日」と言う金魚を売り手が値切ってしまっている。
夜店の怪しい様子でしょうか。
・くちぶえや霧の倫理に従うべし
→「霧」に「倫理」があると言い切られると、肯えるところがあります。
「くちぶえや」の上五の切り方も素敵です。
・真贋や鶴にしずかな日のひかり
→「鶴」と「真贋」は非常の良い組合せですね。上品に最後をまとめています。


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菖蒲園

  • 2011/06/25(土) 14:57:10

【朝から暑い】
朝から強い日差しです。
どんな一日になりますでしょうか。
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前北かおる句集『ラフマニノフ』一句鑑賞
●冬空にぼぼぼと太き飛行雲 かおる
10月24日 慶大俳句三田句会

季題は「冬空」。前書きに日付からするとどう考えても「秋の空」だったと思いますが、その日は冬の空のような日だったのでしょう。
それはともかく、冬の晴れ渡った空に太い飛行雲が走っていく。それを「ぼぼぼ」と捉えたのが眼目です。
「秋の空」でも良い気がしますが、そうでない理由があるのでしょう。



【菖蒲園】
先日訪れた小石川後楽園の菖蒲園です。
見頃であり、色々な俳句会の方がいらしていました。

この場で
●クレヨンを買うて帰ろう花菖蒲 GO!LEAFS!GO!
という名句が生まれました。
この句会の様子は後日皆様の元に届く小冊子に掲載されるそうです。
ちゃんとした俳人を前に恥ずかしいことばかり喋ってしまいました。
穴があったら入りたいです。。。
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前北かおる句集『ラフマニノフ』一句鑑賞
●白鳥の翼の内の白さかな かおる
11月25日 本埜村(11月27日 惜春夜句会) と前書。

季題は「白鳥」。雄大な写生句ではありませんか。
白鳥が何か理由があって翼を開いたとき、その内側も真っ白であったという発見です。
発見だけでなく、作者の清新な心が一句に表れているのではないでしょうか。
実はこの句2回句会で見たことがあります。自己模倣してしまうほど素晴しい写生であったということだと思います。

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仰向け寝

  • 2011/06/24(金) 21:15:08

【朝から】
起きた途端に元気満点暴れ回っています。
手加減というものがありません。
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前北かおる句集『ラフマニノフ』一句鑑賞
●紋章の如き小萩の一花かな かおる
10月1日(10月10日 慶大俳句三田句会) と前書。

季題は「萩」。完全なる説明のような気がするのですが。
私の想像力/連想力不足なのでしょうか。         

【仰向け寝】
病院ではずっと「お腹すいた」コールでしたが、家に帰ってきてコテンとなってしまいました。

何とも堂々とした格好でお休みになられています。
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前北かおる句集『ラフマニノフ』一句鑑賞
●豊年の大河の曲がり美しや かおる
10月18日 夜鷹の会 と前書。

季題は「豊年」。如何にも幸せな光景を屈託なく詠み上げました。

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【奥坂まや句集『妣の国』】

  • 2011/06/24(金) 00:57:06

【奥坂まや句集『妣の国』】 

ここ暫く、特定の方の句ばかり取り上げてをり辟易?としたので、一服の清涼剤を。
奥坂まやさんから第三句集『妣の国』(ふらんす堂、平成二十三年六月)を御恵贈頂きました。

奥坂まや氏は「鷹同人」同人会長を務められているのではないでしょうか。第一句集の『列柱』で俳人協会新人賞を受賞されています。

平成15年に師匠である藤田湘子を、失ってからの句が主にまとめられているようです。
私の印象は気筬兇両呂鵬其腓多かったです。後半になるに連れ、同じモチーフの句が出てくる印象を持ちました。

全体として、季題を通じて己の心象の揺れを表すのが大変巧みであると感じました。
比喩も抜群に効いていて奇抜で、楽しい句が多かったです。

「大暑」「日盛り」など強い季題に対してはより強い対象物をぶつけて、一句に仕立て上げているのは、奥坂さんの力がなせる業だと思います。
対象を「えぐる」「切り取る」素晴らしさに感銘を受けました。

一部、「上手さ」や「理屈」が表に現れすぎている句も目立ちましたが、
文句なしに上手い句も多く、さすがの実力者の一集と感じました。

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以下、印を付けた句の一部をご紹介します。


◎若楓おほぞら死者にひらきけり
◎螢の夜つめたきものを踏みにけり
◎籠に在り梵字のごとき大茄子


◎海は今しづかに月光の器
◎柞山一本道の奥まで日


◎日の射すや桶の海鼠のすこし縮む


◎流氷の来たりし町の万国旗
◎何もなきところ見てをる雛かな


◎はつなつや鯛ひとひらに山葵透け
◎黒板の屠殺頭数雲の峰
◎桃の在るのは人生のちよつと外


◎唐辛子極道色と云ふべかり
◎いちじく裂く六条御息所の恋


◎寒晴の東京こはれやすきかな
◎姿見へ激しく豆を打ちにけり


◎古雛のまなざし水のごとくあり
◎ちよつと意地悪さうなホワイトアスパラガス


◎もも色のほのと水母の生殖器
◎日盛や船腹黒く聳えたり


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