• 2011/12/27(火) 20:24:15

【柿】
柿が実っておりました。
どれも腐りかけていました。年も押し詰まってきました。
風邪など引かれませぬようご自愛下さい。
20111227202415



【『俳コレ』鑑賞その6】

19.望月周 「雨のあと」
望月さんは1965年生まれ。「百鳥」に所属。2010年第56回角川俳句賞を受賞。
非常に俳句の勘所の優れている方で、どの句もさりげない上手さを感じさせてくれます。対象との呼吸の取り方が上手で、対象からの息吹を上手いタイミングで引出すことに巧みであると思います。
また、猟をテーマとした句がイメージ豊かで面白かったです。定期的に通われているのでしょうか。

つやつやと鉄砲町の茅の輪かな
鎌倉をひと駅離れ夕涼み
アトリエのカーテンは無地夜の秋
遠火事の百年燃えてゐるごとし
猟犬と暮らし書斎の広きこと
闘鶏の日輪を背に飛びかかる
花火師がさらに短く草を刈る
猟人と首まで浸かる朝湯かな
枯芝をゆくひろびろと踏み残し
さざなみや磯巾着のほの青し


20.谷口智行 「紀のわたつみのやまつみの」
谷口さんは、1958年生まれ。「運河」「里」「湖心」に所属、既に2冊の句集を出版(『藁嬶(わらかか)』、『媚薬』)されています。お医者さんであり、地元の病院に勤めつつ警察の手伝いなどもされているようです。
熊野の地にどっぷり浸かっていつつ、ちょっと他所ものの目から海の民の暮らしを描いている一連の句には「つくりごと」感がありません。
熊野の地の人たちの息遣いを素材にしてしっかりとした句を読まれる作家です。

身じろぎもせざる藁嬶(わらかか)初神楽
農具市大きな雲の影よぎり
蛇口分ちて洗濯機鮎生簀
山に分け入る夏シャツの検死官
露草や廃船一夜にして傾ぐ
月の田をざんぶざんぶと猪逃げゆく
ようおまわゐりと山墓の草刈女
葛の崖重油の匂ふところあり
がむしやらにママチャリ駆りて海女帰る
乳にほふ霙が雪に変はるとき

21.津川絵里子 「初心の香」
津川さんは1968年生まれ、「南風」同人。07年に第一句集『和音』で俳人協会新人賞を、また同年の角川俳句賞を受賞されており、活躍が非常に目立ちます。現編集長の村上鞆彦さんと「南風」のツートップと云えるでしょう。
俳句は非常に巧みで、彼女の自然な詩情が俳句の提携に乗って流れ出てくるかのようです。言葉の措辞の丁寧さ、ゆったりとしたリズムで読者に長い時間句を読ませる技術など見習う点多であります。

クレパスの七十二色春を待つ
空蝉をたくさんつけてしずかな木
着ぶくれて街中なんと鏡多し
閉ざされて月の扉となりにけり
向日葵のその正面に誰も居ず
綿虫や仕舞ひつつ売るみやげもの
おとうとのやうな夫居る草雲雀
助手席の吾には見えて葛の花
朧夜の「父」と着信ありにけり
骨切りの鱧を畳んで持たさるる

22.依光陽子 「飄然」
依光さんは1964年生まれ、「屋根」「クンツァイト」に所属。1998年に角川俳句賞を受賞されており、大変力のある作家です。
句の構造に隙の無く、緩みがありません。頭がきっとよい方なのでしょうね。「東大俳句」的だと勝手に思いました。

沢瀉の水に映りて月の暈
耕の音なきがらの髯剃るは
星々の押し移りつつ月もまた
天井に風船あるを知りて眠る
ぎんぶなの川に施餓鬼の舟が出る
ワイパーのけづり寄せたる今朝の霜
汗拭や老いて客だが店主だか
鬼灯を上から数へ下から数へ
自転車は遠き夏木に停め来しと
虫鳴くやあたかも月のあるごとく

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冬の川

  • 2011/12/26(月) 00:04:03

【冬の川】
寒林の中を真っすぐ流れ行きます。
本当に寒い日が続きます。ご自愛下さい。
20111226000403


【今日の忘年会】
今日の忘年会はちゃんとした場所で開かれます。
駅から離れた奥まった住宅街、お洒落で困ります。既に体が冷えています。
20111226184304


【『俳コレ』鑑賞その5】
16.渋川京子 「夢の続き」
渋川さんは1934年生まれ。集中掲載の俳人では最年長である。「頂点」「面」「明」に在籍、97年に現代俳句教会新人賞、2011年に現代俳句協会賞を受賞。第一句集『レモンの種』は高い評価を得ていた。
一句一句真面目な句風。人生の重みが言葉に伝わっており、表現したいことに説得力があります。

良夜かな独りになりに夫が逝く
レモン噛夜空は大いなる途中
くちびるは身の先端や秋の風
この街に生まれたるごと水を打つ
アマリリス涎の行方など知らぬ
ハンカチを正しくたたみ出奔す
腹筋をたつぷりつかい山眠る
蚕豆は生みそびれたる子の匂い
フラスコの必死のかたち桜咲く
蓬原からだの電気抜きにゆく

17.阪西敦子 「息吐く」
阪西さんは1977年生まれ。「ホトトギス」「円虹」所属。幼い頃より「ホトトギス」へ投句をされており、「ホトトギス」の若手の切り札と目される存在です。
ご本人は実に大らかで明るく、会った人がみんなが好きになるという方です。

俳句も天真爛漫と言う感じの句が多いです。「上手い」というわけではないと思いますが、「実感」「実景」を淡々と詠うことで花鳥諷詠の枠を広げる活躍を見せてくれることでしょう。

立子忌の坂道どこまでも登る
沈黙を巻き上げて火よ御水取
コインランドリー春風の行き止まり
カフェオレの泡の残りて夕立かな
嘘ついて来れば金魚に見られけり
豆腐屋の匂ひの先の花木槿
日の丸を小さく掲げ島の秋
誰も彼も行つたりきりなる花野かな
雪吊の加賀を盗んでゆくところ
もう人でなくなつてゐる案山子かな

18.津久井健之 「ぽけつと」
津久井さんは1978年生まれ。早稲田大学入学後、「早大俳研」を中興し本集録の松本てふこ、高柳克弘、村上鞆彦、谷雄介などの逸材を輩出する基礎を作りました。現在は「貂」に所属。
素朴な詠いぶりの俳句が目立ちます。淡々とした中に俳句定型の切れと省略を活かし、硬質感のある言葉を多用しつつ、温かい景色を描き出すことに成功していいます。

剥製に豆あたる音寒明けぬ
ものの芽と安全ピンの光り合ふ
風船に祝日の息吹き込みぬ
雨止みてまた滴りのあらはれぬ
秋晴や庭のぢやうぶな洗濯機
厨より卵とく音しぐれけり
ちよつといい豆腐を買つて木枯しへ
兎飼ふしづかに暮らすために飼ふ
白息の消えて鉄棒残りけり
こがらしはきれいな風や昼の月

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野草園

  • 2011/12/25(日) 17:07:08

【今朝の富士】
メリークリスマス!
よく晴れ渡り富士も綺麗です。
典型的な日本の冬型の気圧配置ですね。北日本、日本海側の豪雪の被害が心配です。
20111225084303


【野草園】
近所にある稲荷系の神社に野草園がありました。
結構ちゃんとした野草園でしたが、この時期は烏瓜以外は枯れ果ててをりました。
これも又よろしでしょうか。
20111225170707



【『俳コレ』鑑賞その4】
12.岡野泰輔 「ここにコップがあると思え」
岡野さんは1945年生まれ、「船団の会」。
感情の起伏を前面に前に出された作品群でした。
単なる取合せではなく、ちょっとしところに面白さ、俳諧味を発見しそこから詩の世界を広げていく感じです。
散文的過ぎるかなと思いましたが、これが「船団の会」の特徴でしょうか。
面白いと思った句は、季題が効いている句でした。

滝の上に探偵が来て落ちにけり
夕されば網戸は雨をよくとおす
またひとり雪降る窓に立ち上がる
炎天に妻も銅像岐阜羽島
日盛りを妻留守ならば李白くる
円盤の枯野わずかに浮き上がる
目の前の水着は水を脱ぐところ
芒原シャツと思想を交換す
世の中に三月十日静かに来る
菜の花や見張り塔から人が来る

13.山下つばさ 「森を飲む」
山下さんは1977年生まれ。「街」「海程」に所属されています。
句の特徴は100句でこぼこしているなぁと感じ。
女性らしい柔らかな感性を定型に籠めていますが、若干詰め込みすぎの感じもあります。
もっと省略をすることで余韻を残すことが出来るのではないでしょうか。
ただし、幾つかの句はドキッとさせて頂けました。
特に地名や物の名の「硬質感」を上手く生かした句に

純愛や浅蜊に砂を吐かせてゐる
賞状のやうに辛夷の散りにけり
マンゴーを乗せ加速せし東西線
泡かけて黴を消しゆく夜の果て
プールサイドに人のかたちとなりし水
空蝉の踏まれずにある池袋
非常口開け鬼灯を揺らしけり
花野へと続く数字の羅列かな
顔のかたちして捨てらるるマスク
抜糸する先生の顔梅は実に

14.岡村知明 「精舎」
岡村さんは1973年生まれ。「豈」「狼」「蛮」に所属。
不思議な俳句群です。ご本人の思ったことを順番に並べているのですが、読者である私にとってはどのようにとって良いのかわからないという、不思議感満載です。
「理解するという」解釈から鑑賞を始めないといけないので、苦しみました。
港いく方の句をまとめて読めるのも、このコレクションの良さでしょう。
やや、この分野のベテラン勢に比べ只事感が強いと感じました。

かたくなにベジタリアンで蝋燭で
車座は崩れず花火はじまらず
車椅子集まる広場赤とんぼ
大みそか回送電車明るくて
法然忌うわくちびるはどこへいった
雨音や黙って鶴を持ち帰る
寒の鯉カフスボタンを吐きにけり
みどりごの固さの氷菓舐めにけり
しおこんぶ十一月の雨はやみ
方舟の大きな百合の行方かな

15.小林千史 「エチュード」
小林さんは1959年生まれ、「翔臨」に所属。
幼稚園を経営されているということでそのような観点の句も散見されました。
ちょっと子育て中の私からするとドキッとします。
速度の速い句、言葉を丁寧に扱われているという印象です。

ものの芽にはじまる山の光かな
切藁の流れつきたる野菊かな
霜柱消えたる穴とうなづきあふ
宴かな蚕の尿の香のつよく
海光の籠れる雲や冬座敷
波激しければ激しき踊かな
輪郭の光る子どもらしやぼん玉
枕から声はつきりと蛇の衣
夜神楽の筋肉堅く空を踏む
風の森秋をしづかに吹き伏せぬ

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冬の雲

  • 2011/12/24(土) 02:20:03

【冬の雲】
秩父の方面に、大きな怪しい冬の雲が現れていました。
多摩川の河原からの光景です。
20111224022003


【俳コレ鑑賞その3】
8.太田うさぎ 「蓬莱一丁目」
太田さんは1963年生、「豆の木」などに所属されており、2010年「豆の木賞」を受賞されています。
ゆったりとした句が多いです。定型と切れを良く活かした句が並んでいると思います。
上手くて安定しているのですが、「自分が自分が」と主張されていない点が更に好感をもてます。
くすっと笑わせようとした句も色色とあります。

簗打や遠嶺は雲と混ぢりあひ
スカートのちよつとずれてる昼寝覚
ポストまで歩いてゆけば流れ星
柿剥いて旗日を家にゐたりけり
威し銃空の遠くの明るくて
極月や父を送るに見積書
もう来ない町の鯛焼買ひにけり
なまはげのふぐりの揺れてゐるならむ
最上川雛の後ろを流れけり
野のものを湯にくぐらせる雛の日

9.山田露結 「夢助」
山田さんは1967年生まれ。「銀化」同人として、鋭い評論を書いていらっしゃいます。最近「彼方からの手紙」と言う同人誌をセブンプリントの「ネットプリント」を使って刊行されています。
http://natsushio.com/?p=2628

対象を突き放したような、乾いた感じの句が省略が効いており読んでいて引込まれました。
「男は寡黙で・・・」面白い句を読ませて頂きました。

なお、ほん『俳コレ』は山田露決さんより贈呈いただきました。
有難うございます。
本来ならば昨日の「竟宴」にお伺いして直接御礼を言わなければならないところでしたが、叶わず残念でした。

閂に蝶の湿りのありにけり
春の月水を摑んで放しけり
看板の裏に骨組鳥帰る
気がかりに海月をひとつ加へけり
妻となり母となりたる水着かな
赤ん坊を洗ひあげたる良夜かな
銀漢やサーフボードを干し並べ
たましひいが人を着てゐる寒さかな
給油所をひとつ置きたる枯野かな
夢助となるべく亀を鳴かしけり

10.雪我狂流 「こんなに汗が」
雪我さんは、1948年生まれ。実に愉快な俳句を読まれます。
こういう句は季題の効果が云々とか出なく、楽しく読んでしまえばよいのでしょうか。
頂いた句は、感情を少し抑制され、季題が働いている句にしました。

あーと言ふあ〜と答へる扇風機
終電に鶯餅が忘らるる
水底に光散らかし泳ぐなり
平らなる石で押さへて花筵
躑躅の木躑躅の花に覆はれし
飯粒のくつつき合うて彼岸かな
弁天や蓮見るたびに老けてゆく
母の手の皮の冷たき帰省かな
風船を持つ手を少し高く上げ
この国に散らかつてゆく秋の雲

11.齋藤朝比古 「良夜」
齋藤さんは1965年生まれ。「炎環」に所属、この方も「豆の木」で活躍されており第10回「豆の木賞」を受賞。
第21回俳句研究賞を受賞されています。非常に力のある方です。

身近のことからコツコツと、と言う風情で俳句の要領を十分認識して句を詠んでらっしゃいます。なので、若い人に見られるような「無理」が感じられません。その実力を堪能させて頂きました。
その点で、100句似た雰囲気の句が並んでいるともいえるかもしれません。
これからも、淡々と積上げた成果を見せて頂きたいです。

赤軍の籠りし山の芽吹かな
おのれより大き影曳き卒業す
かたつむり殻引き寄せて睡りけり
いろいろの蓋あいてゐるキャンプかな
祭から祭へ走る巡査かな
サングラス砂を払ひて砂に置く
涼み舟月へ滑りてゆきにけり
後の月ひとりの幅の跨線橋
どんと火に地球儀溶けてゆきにけり
オルガンの息漏れてをり草の花

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高架橋より高架駅

  • 2011/12/21(水) 10:38:04

【高架橋より高架駅】
師走であります。今年は例年に無く温い過ごし方をしています。
今日は都内を徘徊します。
新幹線の高架下の高架橋から高架ホームを撮影してみました。
他意はありません。その程度の忙しさだということです。
これから駅蕎麦を頂きます。
20111221103804


【俳コレ鑑賞その2】
6.南十二国 「星は渦巻き」
南さんは「鷹」に所属の新進気鋭の若手です。1980年生。
「鷹」は高柳編集長をはじめ若手が多いようなイメージがありますが、じつはそうでもないようで、南さんは期待の若手と言うことのようです。
さすがに、「鷹」で揉まれただけあり叙情的でロマンティックな句が多いです。
また、小動物への愛の目は好ましく思いました。
ただし、後半は若干自己模倣が見えてきています。試行錯誤しつつ素敵な俳句を詠ませてくれそうです。

日の昇るまへの青空初氷
雀とぶ平凡いとし初茜
鏡みな現在映す日の盛
凍星や地上にわれのゐる時間
ロボットも博士を愛し春の草
枯園に散らばつてゐる小さき音
たんぽぽに小さき虻ゐる頑張らう
集まつてだんだん蟻の力濃し
あをくなりやがてまつくら秋の暮
重機みな途中のかたち暮れかぬる

7.林雅樹 「大人は判つてくれない」
林さんは1960年生まれ、「澤」に所属されています。
なかなかに文学的作風で、鋭く風刺するような句が多いです。
ですので、面白い句と饒舌すぎる句がはっきり分かれているように思いました。
やはり面白い句は面白いです。俳句でこんなことが云えるのかと感心する点が多々ありました。

干潟にてパンツな見せそお婆さん
蝮捕駅で蝮を振りまはす
葉柳や舟に洗濯物乾く
子ども去る岩に海月を並べ干し
滑り来てスケートコーチ手に竹刀
エスカレーター階繰り出すや終戦日
憎々し子ども相撲の大関は
駐車場家の側面寒々と
遠足のひとりは老いて帰りけり
霜置くや畑の隅の事務椅子に


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『俳コレ』鑑賞その1

  • 2011/12/20(火) 15:16:04

【『俳コレ』】
週刊俳句編、邑書林から刊行されました。
22名が他撰により選ばれた100句が掲載されているアンソロジーです。

集中のお一人より御寄贈いただきました。
誠に有難うございます。好きを見て講評をして行きたいですが、俳諧師さまに先を越されてしまい萎え加減です。
20111220004143


【ある駅】
間もなく片側の線路が高架化されようとしております。
駅の片方は区画整理でごちゃごちゃしておりました。
20111220151604


【俳コレ鑑賞その1】
1.野口る理 「眠くなる」

1986年生まれ。大変繊細な作家です。これまで余り総合誌などで発表していないようですが、「spica」を創刊し、鋭い読みを披露してくれています。
その「読み」で見せる繊細さが俳句にも現れています。

内容が繊細であるため、その分ちょっと作り物っぽい句が散見されますが、
基本的には感じたことをそのまま表現しているのだと思います。
先日入籍されたと伺いました。そのあたりか句にどのように現れてくるか楽しみにしたいです。

出航のやうに雪折匂ひけり
初夢の途中で眠くなりにけり
菱餅のひやりと形ばかりなり
アネモネや動物病院あれば街
メガフォンは黄色く元気雲の峰
敵国の形してゐるオムレツよ
秋立つやジンジャーエール透ける肘
友の子に友の匂ひや梨しやりり
虫の音や私も入れて私たち
靴箱のただ靴を待つやうな色

2.福田若之 「302号室」

1991年生まれの若い作家です。開成高校在学時に俳句甲子園で活躍されました。
如何にも文学青年という感じで主張がはっきりしている俳句を詠まれます。
それが若さとして心地よく感じる句も多々ありますが、散文・饒舌という点でもったいないと思う句もありました。
前半は何か自分の句を選んでくれる大人に向けて詠まれている感じでしたが、読み進むにつれ、御自分の主張がはっきり出てくるようになってきています。


歩き出す仔猫あらゆる知へ向けて
父といっしょがよかったころの扇風機
電光板を赤い株価がよぎる冬
傘というつめたい骨の束をとく
伝説のロックンロール! カンナの、黄!
川沿いにスラムが続く秋の暮
心まで菊人形として香る
先生が雪合戦を横断す
鶴ひくに一縷の銀も残さゞる
さえずりさえずる揺れる大地に樹は根ざし

3.小野あらた 「隙間」

小野さんも、開成高校出身で俳句甲子園で活躍された方です。
1993年生まれなので福田さんの2才後輩。どうやら輪が慶応義塾大学に在学されているようです。
句はお若いながら全うに即物的に、定型内に収めている句風。
100句の五七五を並べてみて文字数がほんとんど、12〜14文字であり、すらりと読めます。
周りには色色な句風の方がいらっしゃるでしょうが、分りやすさを追求して頂くことも大切なことだと思います。
ある意味「慶大俳句」で写生の技術を更に学んでもらいたいものです。

山小屋に干されてタオル固きかな
落蝉の強き羽音の止まりけり
栗飯の隙間の影の深さかな
初夢のまりもの少し動きけり
表だけあたたまりたる日向ぼこ
黒飴の傷舐めてをる夜長かな
潮風の通り過ぎたる枯野かな
順番に初日の当たる団地かな
枯園の道きつちりと曲がりをり
葉の先に山蟻のゐる重さかな


4.松本てふこ 「不健全図書」

松本さんは、1981年生まれ。「早大俳研」で「中興の祖」でこの集中にも掲載されている津久井健之さんと共に、日下野由季さん、村上鞆彦さん、高柳克弘さん、澤田和弥さんという錚々たる面々に混ざり鍛えられてきた方です。

お仕事柄「不健全図書」を扱う機会が多いようですが、それを嬉しくも悲しさもわびしさも無く、淡々と詠っています。その客観っぷりが読んでいて痛快です。
若干撰の関係もあると思いますが、そちらの方向へ強いベクトルが働いているので、こういう「色物」な句ばかりを詠む方と思ってしまいますが、一応違うであろうことを付け加えさせて頂きます。
そちらについては、ご本人の第一句集を楽しみにしましょう。

評論は天下一品です。

おつぱいを三百並べ卒業室
不健全図書を世に出しあたたかし
会社やめたしやめたしやめたし落花飛花
皆誰かに電話してゐるビール飲む
満月や部屋のものみなもらひもの
下の毛を剃られしづかや聖夜の子
歳末や着ぐるみを着て立つ仕事
椎の実をたんまり拾ふさびしさよ
春寒く陰部つるんとして裸像
一斉に風鈴が鳴り商店街

5.矢口晃 「白壁に蛾が当然のやうにゐる」

矢口さんは1980年生。「鷹」に入会後、「銀化」へ移動されています。
境涯句が多かったです。特に「職」に悩む姿の句は真実が感じられ心を打ちました。
私とほぼ同じ年代の方ですが、この世代共通的な悩みを静かに句にしています。もっと知られても良いのではないでしょうか。
抑制的に詠まれた句のほうに好感を持ちました。特に最近の句は「不満」「不安」が表に現れすぎているように思います。

腥く人間として泳ぎたる
二十歳つよき凍星のみ愛す
山に星バターナイフの涼しかり
綿虫の無音と無音ぶつかりぬ
会社辞め口座残りぬ年の暮
あと二回転職をして蝌蚪になる
内縁の妻が子猫を拾ひ来し
台風や隣りて家の灯り合ふ
姿見の後ろに枯野広ごれり
クリスマス近しパン屋のどの棚も

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西原天気句集『けむり』

  • 2011/10/29(土) 13:24:04

【けむり】
西原天気句集『けむり』西田書店
自由闊達な詠み振りが楽しい第一句集です。
例によって、「夏潮」のホームページ「汐まねき」にて紹介させて頂いております。
よろしければご覧下さい。

http://natsushio.com/?p=2267

20111029132404


作者から御恵贈頂きました。誠に有難うございます。

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しなだしん句集『隼の胸』

  • 2011/10/22(土) 10:55:07

【しなだしん句集『隼の胸』】
しなだしんさんの第2句集です。
深夜句会などでご一緒させて頂いております。
大変巧みな句が多く勉強になります。
著者より御贈造頂きました。有難うございます。

20111022105507


「夏潮」HPの「汐まねき」のコーナーで紹介させていただいております。
是非ご覧下さい。
http://natsushio.com/?p=2179

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押野裕句集『雲の座』

  • 2011/10/15(土) 21:01:05

【押野裕句集『雲の座』】
「澤」の実力若手俳人である、押野裕さんの第一句集です。
「澤」らしい、俳句が並んでおります。押野さんの詩の豊かさには感心いたします。
「夏潮」のHP「汐まねき」に鑑賞をアップしました。
ご覧下さいまし。

http://natsushio.com/?p=2092

20111015002305


前北かおる句集『ラフマニノフ』一句鑑賞
●きりきりと暴れ昇りていかのぼり かおる
2月1日 八千代句会

季題は「いかのぼり」。凧のことです。
凧が風に乗って上がっていく様子を読みました。上五の把握に個性があります。よほどの上昇気流に乗ったのでしょう。
凧揚げしている場所は河原なのかもしれません。
下では御しきれなくなり狼狽している子供の姿があるのでしょう。
いかのぼりはお構い無しに昇ってゆきます。

【ぬぼぉ】
ぬぼぉとしております。
ダメージがいろいろ残ってをりますので、土曜日はゆっくり過ごしましょう
20111015131004


前北かおる句集『ラフマニノフ』一句鑑賞
●一邑の廃れて平家蛍かな かおる
2月23日

季題は「蛍」。課題句の投句のようです。
「一邑」という表現が効いていますね。やはり源平合戦の哀れを思い浮かべてしまいます。
現在の情景を漠然としか詠んでいないのが良いのでしょうか。

【おでん!】
今シーズン初のおでんであります。
「越乃寒梅」をちびちびやりつつ、「ジロ・デ・ロンバルディア」を観戦しつつ。
20111015210105


前北かおる句集『ラフマニノフ』一句鑑賞
●薮椿日を乞ふふうもなかりけり かおる
3月8日 八千代句会

季題は「薮椿」。久しぶりに椿が登場しました。
薮椿が日を乞ふて入るようには見えないが、そこには自然と日射しが差して来ている。
薮椿の下を向いている咲き様が良く表現されていると思います。

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夏潮第零句集シリーズ、磯田和子句集『花火』

  • 2011/10/07(金) 18:39:04

【夏潮第零句集シリーズ、磯田和子句集『花火』】
「第零句集シリーズ」第二号は磯田和子さんの『花火』。
鑑賞について、「夏潮」HP上にアップいたしましたのでご覧下さい。

20111007003404


http://natsushio.com/?p=2053

なお第一弾の藤永貴之『鍵』の鑑賞も夏潮HPに載せております。


http://natsushio.com/?p=1783

第零句集を読まれた皆様の感想/鑑賞がございましたらどしどし、「夏潮会」までお寄せ下さい。
積極的に掲載されると思います。

前北かおる句集『ラフマニノフ』一句鑑賞
●大岩魚不覚の口を開きをり
8月31日 夏潮稽古会・石の湯ロッジ

季題は「岩魚」。釣り上げられた大岩魚の口が開いていた。
その表情が如何にも悔しそうに見えた。それを中七のような表現であらわした。
岩魚というのは、賢くてなかなか吊るのが難しい魚であるということを知ると更に句の味わいが深くなるのではないでしょうか。

この句が出された稽古会に私も偶々出席しておりました。
楽屋落ちみたいなことを鑑賞で述べるのは良くありませんが、
逗子の師匠が毎日のように早朝岩魚釣りに出かけていました。
前日大岩魚を取り逃したと悔しがっており、それを新しい装備を用意し釣り上げ鼻高々でした。
そんな師匠に対して、一番弟子を自称する前北氏は俳句でカウンターを与えました。こちらが「やられた」と言う感じでした。

確か同時期の俳句に
「腰の辺に道具いろいろ岩魚釣 祐之」と言う個性的な大雑把な俳句も詠まれていました。

【蓮の実と曼珠沙華】
先日の一枚です。
共に哀れを感じさせて下さいます。
20111007183904


前北かおる句集『ラフマニノフ』一句鑑賞
●大地よりじやがたらいもを掘り返す かおる
8月31日 同前

季題は「じゃがたらいも」。
わっさわっさとショベルカーで掘っていっているのでしょう。
「大地より」という打ち出し方でスケールが増しましたか。


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